今日も酔く飲んだ。

美味しい日本酒と美味しい料理のマリアージュを追究していきます。

甘鯛と風の森

「なんですか?そのヘンな顔の魚」

それが、私が初めて甘鯛を見た時の言葉である。
「バカ!甘鯛だぞ!超高級魚!めっちゃうまいんだぞ!!」
と上司は私に言った。
私が釣りを始めて間もないころ上司に誘われた釣行で、45 cm程度の超大物を上司は釣り上げたのである。

その夜、上司の家で釣果をごちそうになった。
残念なことに、結局私はその日ボウズ(釣果ゼロ)であったので
ホウボウ、イトヨリ、シイラなど、上司が釣り上げた魚たちをありがたくいただいた。
件の甘鯛は刺身と松毬揚げとなった。

これが、とても美味しかった。
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そして今日も私は船の上にいる。ここ最近釣りともご無沙汰だったが
約1年ぶりに釣りに行くことにした。狙うは、そう、甘鯛。
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6時間の乗船時間で、なんとか1匹、本命の甘鯛を釣り上げることができた。
サイズは30 cm。市中で購入すれば結構いい値段ではないだろうか。
船中0~3匹だったので、まずまずと言ったところだろう。
中には50 cmオーバーのモンスター級を釣り上げた人もいた。
自分は棚が高かったのか、赤ボラなどの外道がたくさん釣れた。
これらも天ぷらにするとおいしいので、もちろん持って帰る。

途中を省略するが、甘鯛はあの美味しかった松毬揚げに、赤ボラやトラギスたちは天ぷらにした。
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これに合わせる今回のお酒は
風の森 純米大吟醸しぼり華 奈良県産秋津穂。
風の森という蔵は、山田錦のような王道から、
露葉風のような変わったものまで様々な酒米でお酒を醸している奈良県の蔵、油長酒造。
徹底的にお酒を酸化させないよう製造しているらしく、キャップには入念に封がしてあり、キャップが飛ぶかもしれない旨の注意書きがある。
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まずは風の森をひとくち。
予想外に結構甘味が強い。風の森は、そのガス感とさわやかさが特徴だと思っていた。酒米でこんなにも違うとは。
立ち香は非常に上品で、バニラのような甘い香りと、ユリの花のようなエステル系の香りがする。
口に含むと甘味がやわらかく舌の上に広がり、それが弱まると若干アミノ酸系の複雑味がやってくる。
喉には何もひっかからず、とても飲みやすい。美味しい。
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先日長野に旅行した際に、おもしろい七味を買ってきた。なんと山椒が最近流行りの花椒に置き換わっている。
マルタ島産の天日塩にこの七味を少し混ぜ、松毬揚げをいただく。
鱗のサクサク感と、身のふんわりとした食感のバランスが絶妙。
天ぷらの油ですこしまったりとした口に風の森を流し込んでみる。
なんだこれ。甘鯛の淡泊な旨味、天ぷらの油のまったり感を風の森がうまくまとめ上げ、
もう快感と言っていいほどのおいしさに昇華させていく。
うますぎる。

そうしているうちに、すぐに甘鯛はなくなってしまった。
さて外道たちはどうだろう。天ぷらを食べてみる。
こちらも美味しい。松毬揚げではないので鱗のサクサク感はないが、身のふわっとした感じは甘鯛にも負けていない。
風の森・秋津穂とこちらもよく合う。うまい。

うん、今日もよく飲んだ。

ポットベラと新政

面白いキノコを見つけた。
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以前、美味しいと同僚から聞いたことがある静岡県富士市の長谷川農産のポットベラ
一般的にはジャンボマッシュルームとか、その前にウルトラやスーパーがついたりして呼ぶこともあるようだ。
ポットベラ-PORTA BELLAとはイタリア語で「大きな傘」という意味らしい。
その名に違わず、およそマッシュルームとは思えないサイズ。
この写真ではサイズ感がわかりづらいので、四合瓶と並べてみた。
どれくらい大きいかおわかりいただけると思う。
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裏は黒いようだ。
どう料理するか迷ったが、結局は一番シンプルなレシピを選択。
やっぱり本来の味を確かめなくては。
複雑な調理をするのが面倒だったというのもあるけど。
参考にしたレシピはこちら。ありがとうクックパッドcookpad.com
地中海マルタ島産の天日塩を裏面に振って、
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オリーブオイルを適当にかけて200度に予熱したオーブンで15分。
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順調に焼かれている。
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できあがり。エキスが染み出して裏面が湿っている。白いのは溶け残った塩の結晶。 これに合わせる今日のお酒はこちら。
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新政酒造 新政 瑠璃-ラピス- 生酛木桶純米 美山錦 2018
最近、とても注目を浴びている新政酒造。スタンダードラインのNo.6が酒販店で入手困難になりつつあったりする。
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注いでみると少し気泡が見える。酒器はSCHOTTのぐい飲み。温度は冷蔵庫から出したままくらい。
飲んでみると、気泡が見えた通り少し舌先にガス感を覚える。
立ち香はあまりなく、少しバナナのような香りと生酛らしいサワークリームというか乳製品というか、な香りがする。
含み香はすこーし木の香りがする気がする。
以前、木桶に切り替える前と後のヤマユ(新政酒造の以前あった銘柄)を飲み比べたことがあるが、その時ほど木桶の芳香は強くない。
何年か経って桶のほうのコンディション?も落ち着いてきたのかな。
あの時の衝撃は忘れられない。
話がそれた。
味わってみると、まず上品な酸味、つづいて甘味がやってきて、そして飲み込むと同時にスッと消えていく。
これなら料理を邪魔せず、また山の食べ物にもよく合いそう。
ポットベラにかぶりついてみる。
すごい。
あふれ出るエキスと同時に口いっぱいに広がる上品なキノコの香り。
うまい。
キノコと塩とオリーブオイルだけで、もう味として完成しているかもしれない。 そこに新政を一口。上品なキノコの香りが、優しい食中酒で溶けていく。
ポットベラの塩味と、口に広がったまったりとしたキノコの香りが、新政のガスと酸味で流されていく。
幸せだ。

うん、今日も酔く飲んだ。